契約更新の時期になると、管理会社や大家さんからお知らせが届きます。その書面に「家賃を値上げしたい」という申し出があった場合、あなたはどうしますか?家賃の「値上げ」か「値下げ」か「現状維持」か?それぞれの可能性はどの程度あるのでしょうか。
賃貸物件の所有者である大家さんが、家賃を決定しているのは言うまでもありませんが、大家さんが家賃を決めるときには、様々なデータや情報を考慮して適正な価格を導き出しています。
物件のある地域の人口や住人の構成比、交通手段の有無、商業施設の有無、周辺マンションの相場などをリサーチします。更には、建物の建築費用、メンテナンス費用、保険料、広告費などなどを加味し、収支のバランスが取れた額を決定しているのです。
では、「家賃は大家さんからの言い値でしかないのか」というと、そうではありません。家賃は、家主と借主の合意があってこそ決定されるものです。部屋を借りるときは、最初に提示された家賃に納得しているから、賃貸契約を結ぶのです。
しかし、家賃は永久に同じ金額とは限りません。社会情勢や経済動向、物件の周辺状況や建物の劣化などによって変動します。上がることもあれば、下がることもあるのです。
大家さんから値上げの申し出がある場合もあるでしょうし、逆に「家賃が高すぎる」と感じる場合は値下げを提案することも可能です。家賃が変わるときには、お互いに納得する金額に落ち着くまで、交渉する必要があります。
では、家主から家賃の値上げを言い渡されたケースについて考えてみましょう。家賃の値上げは、不条理なことではありません。「借地借家法」という法律にも、家賃を上げるときの3つの条件について明記されています。
○土地や建物の租税等の増加によって、土地、建物の価格が上がり、現在の家賃が不相当となった場合
○経済事情の変動により、現在の家賃が不相当となった場合
○周辺の類似物件の家賃と比べて、不相当となった場合
以上、いずれかの条件を満たす場合に、家主は家賃の値上げを通達することができます。例えば、「固定資産税が増額された」「国内の物価が上昇した」「周りに建っている、同じような物件と比べると現状の家賃は安すぎる」といった理由です。
家賃の値上げについては、入居時に交わした「賃貸借契約書」に取り決めが記載されていなくても、法律的に何の問題もないということになります。また、値上げを通達する時期も法律には定めがありません。極端な話、契約更新の数か月前でも前日でも許されるのです。
大家さんから家賃の値上げを言い渡されたとき、事情を理解できるのであれば更新の手続きを行いましょう。しかし、もし納得がいかないのであれば「家賃交渉」になります。
その時に大事なのは、「現在の家賃は払い続ける」ということです。納得できないからと言って、家賃を一銭も払わないでいると家賃の滞納になってしまいます。債務不履行の状態では、交渉も前には進みません。大家さんと、円満に家賃について話し合いたい場合は、現在の家賃を払って対等な立場でお互いの意見を言い合えるようにしておきましょう。
一方の家賃の値下げですが、これについても借地借家法に「減額請求できる」という記載があります。
大家さんは、「家賃が高すぎて空き室が埋まらない」「事故物件になってしまった」などの理由で賃料を値下げすることがあります。また、借主は「同じマンションで空き家になった部屋の家賃が、自分の家賃よりはるかに安かった」「隣に高いビルが建って日当たりを確保できない。条件が悪くなった」などの事由があれば、大家さんに値下げを相談してもいいのです。
大家さんから言い渡される値下げであれば借主としては嬉しいことですが、「なぜ値下げしたのか」については確かめておいた方がいいでしょう。また、借主から一方的に「家賃を低くしてほしい」と主張するばかりでは、大家さんとのトラブルになりかねません。正当な理由を用意して、大家さんとの話し合いが進められるようにしておくのがベストです。
しかしながら、ペットが入居できるマンションや駅近の人気物件であれば、大家さんは家賃を下げなくても新しい入居者を見つけることができるので、借主からの値下げ交渉は難しいでしょう。退去者が増える時期は、多少交渉がしやすくなるので、タイミングを見計らって大家さんに伝えるといいかもしれません。
結局のところ、賃貸物件の家賃が変動する可能性はどれくらいあるのでしょうか?
家賃は、経済情勢の影響を受けて変動します。これまで、日本の賃貸物件が辿ってきた家賃の推移を簡単に振り返りながら、結論を導き出してみましょう。
賃貸物件の家賃は、高度経済成長時にかけて右肩上がりに上昇し続けてきました。その後、1990年代後半からは横ばいになっていきます。新築物件の価格に比べて、賃貸物件の家賃相場は景気の変動を受けにくく安定していると言われてきました。
しかし、リーマンショックを皮切りに賃料が下がり始めます。世界的な経済状況の悪化により、日本国内にある賃貸物件の需要と供給のバランスが崩れたのが原因とされています。以降、民間の賃貸物件は値下がり傾向にありましたが、直近では上昇傾向がみられます。地域によって状況が異なっていますが、現時点では、家賃が上がるまたは下がる可能性は一概には言えません。
大家さんや不動産屋さんに言われるがまま決定しがちな家賃ですが、火災保険についても同じことが言えるのではないでしょうか。現状、可能性としては低いかもしれませんが、もし契約更新時に家賃が値上げされることになったとしたら、どこかで出費費用を抑えたいですよね。またとにかく支出を抑えたいと考えて家賃値下げ交渉をした人ならば、さらなる支出の削減を望んでいるかもしれません。
そんなときは家賃だけでなく、火災保険も見直してみましょう。不要な補償を省いたり、同じような補償でもよりリーズナブルな保険に切り替えたりと、固定費を下げることも可能でしょう。
家賃が変わるということは、大家さんにとっても借主にとっても大きなことです。家賃交渉が原因で、大家さんと借主のトラブルになることも少なくはありません。最悪の場合は訴訟にまで発展するケースもあるほどです。双方にとって揉め事になっても、良い事は一つもありません。
家賃の値上げや値下げ交渉は、法律で定められた権利です。大家さんにも借主にも、良い結果だったと言えるような前向きな家賃交渉になればいいなと思います。