独り暮らしを始める時など、賃貸物件を借りる際について回るのがお金の話です。不動産屋さんで話を聞いてみると「○○金」が多くて、いったいいくら必要なのか頭が混乱してしまいますよね。部屋を借りる前に「不動産の基礎知識」を押さえておきましょう!
部屋を借りる時は様々な「○○金」がありますが、大きく分けて「返ってくるお金」と「返ってこないお金」があることを覚えておきましょう。
まずは、「返ってくるお金」の1つ、「敷金」についてご説明します。
諸説ありますが、その語源は江戸時代にあるとされています。江戸時代の女性は、結婚する際に実家から持参金を持ってお嫁にいく習慣があったそうです。その際のお金を「敷金」と呼んでおり、離縁する際は敷金が返ってくるというシステムがあったようです。
「敷金」とは、家主さんに予め預けるお金で、保険のような役割を担っています。部屋を退去する時に、敷金から原状回復のためのクリーニング代や修繕費用が差し引かれます。また、家賃の滞納があったときには敷金が充てられますが、敷金に余剰が出た場合は借主に返ってきます。敷金を全額出しても足りない場合は、もちろん追加で請求されますので、注意が必要です。
敷金の相場は、だいたい家賃の1か月分です。契約する際、解約時に修繕費用がいくらかかるかを確認しておけば、返ってくる敷金の金額が大まかに把握できます。
借りた部屋は極力傷つけないように綺麗に使うのが基本です。原状回復の必要がなければ敷金が全額返ってくることもありますので、日々のちょっとした気遣いが大きな節約に繋がると言えます。
経年劣化は借主に責任はありませんが、どれだけ部屋が綺麗でも敷金からクリーニング代を必ず差し引くというところもあります。何にしろ、契約時にしっかり確認することが重要です。
近頃では、「敷金0」の物件もあります。敷金は入居時に支払うお金ですから、それがゼロであれば初期費用はその分押さえられます。しかし、前払いしていないだけなので、クリーニング代や修繕費が発生すれば、もちろん退去時に請求されます。
加えて、万が一家賃を滞納した時には、敷金という保険が何もない状態なので、家主の取り立ての対応も変わってくるでしょう。
この敷金のシステムは、主に関東地方で使われているもので、関西より西の地域では「保証金」という言葉が使われることも多いです。
前述した通り、関西地方や中国地方、九州などの一部地域で「敷金」の代わりに使われているのが「保証金」です。保証金も「返ってくるお金」です。
役割は敷金と同じで、退去時の清掃代や不注意で壊れた部屋の修繕費に充てたり、家賃滞納時の補てんに使われたりします。では、敷金と保証金は完全にイコールであるかと言うと、そうではありません。
保証金には、お礼の意味も少なからず込められているとされています。その為、元々敷金より高めに設定されていることが多いようです。幅は、家賃の3~10か月分と言われています。相場は3~6か月分が一般的なようですが、それでも敷金に比べるとかなりの高額と言えます。
また、保証金は最初から償却金額が決まっています。 例えば、「保証金は20万円、解約時に15万円を差し引いて5万円を返金」といった具合です。初めから金額が明確な分、分かりやすいとも言えます。しかし、大規模な修繕が必要な場合や、退去時のクリーニング代金などは別で請求される場合があります。
保証金は主に大阪で主流となっていた商習慣ですので、敷金に慣れている関東から関西に移り住む場合は、しっかりとそのシステムを把握しておきましょう。
次に、「返ってこないお金」です。この金額が低ければ、部屋を借りる時の出費は押さえられると言えます。
「礼金」は文字通り、契約時に家主に支払う「お礼」のお金です。戦後の賃貸契約において借主が家主に物品や金銭を送っていた習慣が、その由来だそうです。
礼金のシステムは、主に関東で敷金とセットで使われています。家主はこの礼金を使って、不動産会社や情報誌に部屋の広告を出して入居者を募集します。 相場は、家賃の1~2か月分とされています。
一方、関西では礼金というものがありません。それは、先ほど紹介した保証金というシステムがあるからです。保証金は、返ってくるお金と返ってこないお金がはっきり決められていますので、保証金の返ってこないお金に「礼金」が含まれていると考えると腑に落ちるのではないでしょうか。
また、保証金にセットされているものに「敷引き」という制度があります。
敷引きは、退去時に保証金から家賃の何か月分かを無条件で差し引くというものです。差し引かれたお金は部屋の原状回復に充てられますが、修繕費が安くすんで余剰金が出たとしても借主には返ってきません。しかし、損傷が激しい場合は追加請求もあり得ます。
つまり、関東では「敷金・礼金システム」、関西では「保証金・敷引きシステム」だと理解して頂ければ良いかと思います。ただ、関西で敷金・礼金と呼ぶこともありますし、最近では関東の一部の地域で敷引きシステムを導入している物件があるようです。敷引き分は絶対に返ってきませんので、契約時に不明なことがないようにしておきましょう。
不動産にまつわるお金は、上記のものだけではありません。その他にも、様々な「○○料」「○○費」と呼ばれるお金が発生します。家賃に上乗せされる共益費や管理費、契約時に不動産会社に払う仲介手数料、部屋の賃貸契約を延長する時に家主に支払う更新料、見落としがちですが火災保険料も、賃貸物件を借りる時には必ず払わなければいけません。
契約時に発生する費用の内容を正しく理解していないと、想定より初期費用が高額になったり、契約更新時にお金が足りなかったりという事態になりかねないのです。
部屋を借りる時には、一般的に初期費用で数か月分の家賃に相当する額を用意しなければいけません。初期費用に加え、退去時に必要なお金も確認しておかないと、後々家主とのトラブルに発展することも考えられます。
借主も家主も、気持ちよく部屋を貸し借りしたいですよね。その為にも、借主として最低限の知識は身につけておきたいものです。